【完全ガイド】個人事業主の独立開業|意外と簡単な手続きや必要な準備まとめ
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個人事業主として独立することは、自由度が高く、大きなやりがいを得られる可能性があります。一方で、責任が全て自分にあり、不安定な面も否めません。
本記事では、個人事業主と法人の違い、独立のメリット・デメリット、独立前にやるべきことなどを解説します。
独立開業とは
独立開業とは、会社や組織に属さず、自分で事業を立ち上げることです。具体的には、個人事業主として開業するか、法人を設立して事業を始めることを指します。
従来は、会社を辞めて独立開業するケースが多かったため「脱サラ」とほぼ同義の意味で使われていましたが、近年では、副業として独立開業する人も増えています。
独立開業には、以下のような方法があります。
- 個人事業主として独立
- フリーランスとして独立
- 法人を設立して独立
- 会社員として働きながら副業で独立
この記事では「個人事業主として独立」する場合の手続きなどについて解説します。
個人事業主とは
個人事業主とは、法人を設立せず、個人で事業を営む人のことです。
会社員と異なり、雇用関係ではなく、自らが事業主として責任を持ち、利益を得ることも損失を被ることも全て自己責任となります。
税務署に「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(開業届)を提出すると、“税務上の区分”において個人事業主として独立したことになります。
個人事業主の開業費用や税金、社会的信用度は以下のとおりとなっています。
開業費用
開業届の提出にかかる費用は0円です。
仕入れや経費などを除いて、事業を開始すること自体は0円で可能です。
税金
個人事業主にかかる税金のうち、所得税に関しては累進課税制度が適用されます。
所得税は所得金額によりますが、最大の税率は45%となります。
社会的信用度
前述のとおり、個人事業主は独立時の手続きが簡単で、資本金も必要ありません。
独立のハードルが非常に低いため、金融機関などに「個人事業主は、実績がない人でも簡単に独立できる」とみなされることがあります。
法人と比較すると社会的信用度は低いといえるでしょう。
参考:「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(国税庁)
個人事業主として独立するために
個人事業主として独立する場合に、やっておいた方がよいこと、やるべきことがあります。
- 独立前にクレジットカードを作る
- 小規模企業共済や組合への加入を検討する
- 開業届/事業開始等届出書を提出する
- 青色申告承認申請書を提出する
- 確定申告をする
会社員などのように雇われているときは簡単にできたことも、独立すると難しくなってしまうケースがあります。
独立してから困るのではなく、事前に準備できるものは、準備しておくようにしましょう。
独立前にクレジットカードを作る
個人事業主や起業したての社長は、クレジットカード発行や住宅ローンの審査が通りにくくなるといわれています。
将来、必要になると考えられる場合は、独立する前に作っておくのが無難です。
ただし、脱サラをして起業する場合などは、退職後にクレジットカード会社に退職した旨の連絡をする必要がありますので、その手続きも忘れないようにしましょう。
小規模企業共済や組合への加入を検討する
個人事業主として独立した場合、社会保障や老後の資金などについて不安になることもあるでしょう。
そんなときに加入できるのが、小規模企業共済や個人事業主向け組合です。
小規模企業共済とは、小規模企業の役員や個人事業主でないと加入できない共済制度です。
掛け金は千円から7万円までの範囲内で自由に決められます。
掛け金は年間で最大84万円を小規模企業共済等掛金控除として課税所得から控除できるため、大きな節税効果を得つつ、老後資金を貯めることができます。
ただし、受け取りの条件などがあるので、必ず調べておきましょう。
また、個人事業主向け組合への加入も1つの手段です。
個人事業主向け組合には、組合員だけが入れる保険がある組合もあります。
また、セミナーや勉強会が開催されるなど、つながりが少ない個人事業主にとっては、加入することで大きなメリットになるでしょう。
開業届/事業開始等届出書を提出する
開業届を提出する際には、以下の書類が必要となります。
- 開業届
- 本人確認書類
- マイナンバーがわかるもの
開業届は、国税庁のホームページからダウンロードできます。
本人確認書類は「運転免許証、パスポート、住民票など」が必要です。
マイナンバーがわかるものは、マイナンバーカード、マイナンバー通知カード、住民票などが必要です。
注意点
開業届は、事業開始後1ヶ月以内に提出する必要があります。
開業届には、事業の名称、所在地、事業内容などを正確に記載する必要があります。
法人設立の場合は、開業届ではなく、定款などの書類を提出する必要があります。
提出方法
- 税務署の窓口に持参する
- 郵送する
- インターネットで提出する
開業届の提出以外にも、青色申告承認申請書や消費税に関する課税事業者選択届出書などを提出する必要がある場合があります。
詳しくは、税務署にお問い合わせください。
青色申告承認申請書を提出する
個人事業主として独立をすると、確定申告をする必要が出てきます。
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、自分が個人事業主としてどちらの申告方法で確定申告をするのか決める必要があります。
仮に青色申告をする際には、開業後2ヵ月以内に「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に対して提出しなくてはいけません。
確定申告を青色申告にすると、以下のような特典があります。
- 赤字を3年間繰り越せる
- 最大65万円の基礎控除がある
青色申告をするためには複式簿記などで帳面付けをする必要があります。
しかし青色申告をした方が節税になるため、会計については業務委託をしたり、会計ソフトを活用したりなどして労力を抑えつつ、青色申告してみることをおすすめします。
確定申告をする
確定申告の提出方法は以下の3つがあります。
- 税務署に郵送
- 税務署に直接提出しに行く
- e-Taxで提出
青色申告特別控除額は55万円ですが、e-Taxで提出した場合は、65万円となるため、確定申告はe-Taxで提出するのがよいでしょう。
必要な備品等を準備する
個人事業主として独立するまでに準備しておくと役立つものがいくつかあります。
- 名刺
- 仕事用のメールアドレス
- ホームページ
- プリンター・スキャナー
- 会計ソフト
- 銀行口座
名刺は、あなた自身の営業ツールであり、第一印象を左右する重要なアイテムなので、デザインや内容にこだわりましょう。
フリーメールではなく、独自ドメインを取得したメールアドレスを用意すると、信頼感を与え、ビジネスシーンで役立ちます。
ホームページは、あなたの事業内容や実績をアピールする場であり、顧客獲得や信頼構築に効果的です。
会計ソフトを活用することで、会計処理や確定申告を効率化できます。
銀行口座は、事業用とプライベート用を分けるために、新しく開設しましょう。
上記以外にも、事業内容に応じて必要なアイテムがあります。
個人事業主として独立するメリット
個人事業主として独立するメリットに、以下の2点があげられます。
- 独立までの手続きが簡単
- 初期費用や運転資金が割安
独立までの手続きが簡単
個人事業主として独立する際に必要な手続きは“税務署に開業届を提出する”のみです。
開業届の記入は難しいものではないため、簡単に手続きを完了することができます。
初期費用や運転資金が割安
前述のように、法人の開業費用は20万円から25万円程度必要であるのに対し、個人事業主は、手続きのみであれば0円で独立することができます。
資金に不安がある方でも、個人事業主という独立の選択肢があれば、不安も軽減されるでしょう。
また個人事業主の場合、事業が軌道にのるまでは自宅の一部をオフィスとして利用することも可能です。
その場合、自宅の家賃の一部が経費扱いになるため、オフィスを別の場所に構えるよりもコストを抑えることができます。
また、従業員を雇わずに一人で独立するのであれば、大きな固定費となる人件費も抑えることが可能です。
個人事業主として独立するデメリット
もちろん個人事業主として独立するデメリットもあります。
ここでは、以下の3点に絞ってデメリットを解説します。
- 健康保険(被用者保険)と厚生年金に加入できない
- 稼ぐ金額が多いほど税金が高くなる
- 実は法人より個人の責任が重い
デメリットを把握することが思わぬ失敗の可能性を軽減することにつながるため、必ず理解しておきましょう。
健康保険(被用者保険)と厚生年金に加入できない
個人事業主の場合、国民健康保険と国民年金に加入します。
会社などに雇用されている場合は、健康保険(被用者保険)の保険料は会社と折半ですが、国民健康保険では、個人で全額支払うことになります。
また、厚生年金よりも国民年金の方が、受給できる年金額も少なくなることが多いです。
稼ぐ金額が多いほど税金が高くなる
所得が少ない場合は法人よりも税率が低いため、税金を抑えることができます。
一方で、所得が一定の額を超える場合は、法人よりも高い税金が課税されることになります。
そのため、個人事業主と法人を選択する際に、所得金額が判断基準になるケースがよくあります。
実は法人より個人の責任が重い
法人の場合、事業に失敗して倒産したときでも、自らが出資した金額のみが責任の対象となります。
しかし、個人事業主の場合、取引先に与えた損害などにおいて個人ですべての責任を負う必要があり、自らの全財産を投入してでも責任を取る必要があるということを理解しておきましょう。
まとめ
個人事業主として独立するためには、開業届を提出すれば簡単にできるということが分かったと思います。
ただし、独立自体は簡単にできても、その後の事業運営は一筋縄にはいきません。
独立は多くのことを考え、準備し、実行する必要があります。
独立すると経営以外にも確定申告などの事務手続きにも多くの時間を割く必要が出てきます。
そんな中、フランチャイズという選択があることを忘れてはいけません。多くの個人事業主がフランチャイズという独立手段を選択しています。
フランチャイズに加盟して独立するという選択肢が選ばれる理由には、フランチャイズ本部のサポートがあげられます。
事務手続きや経営において、手厚い本部のサポートがあるため、個人で事業を進めていくよりも、安心してビジネスを進めていくことができます。
気軽に独立はできますが、独立後が不安な場合は、フランチャイズを1つの選択肢としてぜひ検討してみてください。
よくある質問
Q:個人事業主と法人設立、フリーランスとの違いを知りたい
A:法人との違い/開業資金、税金の種類、社会的信用度
フリーランスとの違い/税務上の区分
法人設立との違い
個人事業主と法人では、主に3つの違いがあります。
- 開業費用
- 税金の種類
- 社会的信用度
法人として独立するということは、会社を設立することを意味します。
法務局に登記申請手続きをすることで会社は設立できますが、手続きには登記申請書や定款の作成などが必要なため手間がかかります。
開業費用
法人の開業費用は20万円から25万円程度かかるといわれています。
この金額には定款の認証手数料や印紙代、登記の登録免許税が含まれます。これに加え資本金も必要になってきます。
税金の種類
法人にかかる税金は、法人税や法人住民税などがあります。
一定額以上の利益が出た際には、累進課税方式の所得税で最大45%の税率がかかる個人事業主よりも税金を抑えることができます。
一方で赤字の場合でも、法人住民税の分は税金がかかるという面もあります。
社会的信用度
法人として独立するほうが、個人事業主であるよりも融資が通りやすかったり、取引先からの信用が高くなったりするという傾向があります。
個人事業主と比べて法人の方が信用度が高い理由は、責任の所在が明確、持続性の高さが期待できる、情報公開の義務があるなどの点があげられます。
参考:「法人住民税」(総務省)
フリーランスとの違い
フリーランスとは、特定の企業や団体に所属しない働き方のことを指します。
個人事業主とは税務上の区分のことであり、フリーランスとは働き方のことを指します。
Q:主婦でも独立開業できる?
A:できる!主婦ならではの強みを活かせるチャンスもあり
近年、女性の起業家が増えており、主婦の方でも独立開業を実現している方はたくさんいます。
主婦が独立開業しやすい理由
- 家事や育児を通して培った豊富な経験や知識がビジネスに活かせる
- 地域の活動や子育てサークルなどで培った人脈が顧客獲得や情報収集に役立つ
- 家事や育児の工夫で培った柔軟な発想は、新しいビジネスアイデアを生み出す源泉となる
主婦におすすめの独立開業方法
- 自宅でできる仕事(ライティング、翻訳、データ入力、デザインなど)
- 子供と一緒にできる仕事(ベビーシッター、キッズカフェ運営、子供服販売など)
- 得意分野を活かした仕事(料理、裁縫、ハンドメイド、語学など)
- 地域のニーズに合わせた仕事(地域の高齢者向けサービス、子育て支援サービスなど)
主婦向けの支援制度
- 制度融資
- 創業支援補助金
- 創業支援セミナー
日本政策金融公庫や市区町村などが、女性や子育て中の起業家向けに制度融資を用意しているほか、国や自治体による創業支援のための補助金・助成金を支給しています。
Q:個人事業主になれる人の特徴を知りたい
A:1. 自立心と責任感がある
2. 行動力がある
3. 柔軟性がある
4. 忍耐強い
5. 向上心がある
6. コミュニケーション能力がある
7. 時間管理能力がある
8. リスクを承知できる
9. 好きなことを仕事にできる
10. 家族や周囲の理解と協力がある
個人事業主は、自分の力で事業を立ち上げ、運営していくため、強い自立心と責任感を持っていることが重要です。
自分のアイデアを形にするためには、積極的に行動することが大切です。待っているだけでは何も始まりません。
市場環境や顧客ニーズの変化に柔軟に対応できることも重要です。
独立開業してすぐに成功する人はいません。多くの場合、試行錯誤を繰り返し、時間をかけて成功を掴むものです。
常に新しい知識やスキルを学び、向上していく姿勢も必要です。
顧客や取引先との良好な関係を築くためには、コミュニケーション能力も重要です。
限られた時間の中で、効率的に仕事を進めることができる必要があります。
個人事業主は、雇用されている会社員よりも収入が不安定になる可能性があります。リスクを承知した上で、独立開業を決断する必要があります。
好きなことを仕事にできれば、モチベーションを維持しやすくなります。
独立開業は、自分一人だけの力では成し遂げることができません。家族や周囲の理解と協力が不可欠です。
Q:40代からの独立開業は厳しい?
A:40代ならではのメリットもある
40代からの独立開業は、決して厳しいものではありません。
むしろ、20代や30代で独立開業するよりも、多くのメリットがあります。
40代からの独立開業のメリット
- 豊富な経験と知識・人脈
- 経済的な基盤
- 安定した心構え
40代までに積み重ねた経験や知識は、独立開業において大きな武器となります。
特に、これまで培ってきた専門スキルやマネジメント経験は、事業を成功に導く上で非常に役立ちます。
40代までに築いてきた人脈が顧客候補となったり、協力者を紹介してもらえたりする可能性があります。
20代や30代と比べて、ある程度の貯蓄や資産を持っている可能性が高いため、資金調達がしやすくなるというのも特徴です。
40代で独立開業する際の注意点
- 体力的な衰えに注意
- 新しいことに挑戦する意欲を持つ
- 家族の理解と協力する
20代や30代と比べて、体力的な衰えを感じ始める人もいるかもしれません。無理せず、自分のペースで仕事を進めることが大切です。
新しい知識やスキルを学ぶことに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、常に新しいことに挑戦し続けることが重要です。
独立開業によって、家族の生活にも影響が出る可能性があります。家族の理解と協力が得られるかどうかを事前にしっかりと確認しておきましょう。
40代で独立開業を成功させるためには、自分の強みや経験を活かせる事業を選ぶことが大切です。
Q:開業届は出さなくてもいい?
A:提出義務がないのは一部のケースのみ
個人事業主として独立開業する場合、原則として開業届の提出が必要です。
事業を開始した日から1ヶ月以内に、開業届を管轄の税務署へ提出する必要があります。
提出が不要な場合
- 不動産所得や山林所得のみが発生する場合
- 事業所得が発生するが、青色申告の承認申請を行わない場合
- 事業所得が発生するが、簡易課税制度を選択する場合
開業届を提出しないことのデメリット
- 青色申告の承認申請ができない
- 確定申告書の提出方法が限定される
- 各種補助金や融資を受けられない可能性がある
<文/ちはる>
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