サッカー・室﨑雄斗さん|現役選手×営業成績新人トップ 地域リーガーから見たデュアルキャリアの未来と可能性

2024.12.26
取材/ 上岡真里江
撮影/ 野口岳彦

 アスリートとしての経験を武器に、「デュアルキャリア」という新しい働き方に挑戦している人が増えている。現在、株式会社リクルートスタッフィングで働く室﨑雄斗さんもその一人だ。室﨑さんは、関東サッカーリーグの東京ユナイテッドFCでプレーする現役選手でありながら、人材派遣業界で新人賞を受賞する快挙を成し遂げた。競技と仕事の両立に向き合う中で感じたやりがい、不安、そして成功の秘訣とは一体何なのか。

 インタビュー後編では、自らの挑戦を通じて、アスリートが持つ可能性を広げたいと語る室﨑さんに、その原動力と未来への思いをうかがった。

前編はこちら

――現在の業務内容は?

室﨑 人材派遣ということで、お仕事を探されている方々と、人材を募集している企業とのマッチングのお仕事になります。企業の担当者と会話し、どのような人材を求めているのか、またどのような課題を抱えているのかをヒアリングします。その情報を基に、ニーズに合った派遣スタッフを人選します。僕たちの主な業務は、派遣スタッフの就業機会を創出し、彼らのキャリアをサポートすることです。このプロセスを通じて、企業の人材ニーズに応えつつ、求職者の方々に適した職場を提供しています。

 僕は、将来的に経営に携わる、または管理職になるという目標があります。そのため、人材会社で働くことはとても魅力的だと思っています。いろんな業種や企業の方のお話を聞けるので、さまざまな仕事について知識を深めることができるんですよね。
 また、就業している方のサポートができるというのもポイントでした。理由は、自分自身が経営者や管理職という立場になった時に、自分の部下が悩んでいたり、迷っていたりしたら、どうしていかなければいけないかをマネジメントしなければいけない。普通、管理職でいうと、4年、5年働いて初めてその立場にたっての仕事ができると思うのですが、リクルートスタッフィングでは、1年目から就業している方の悩み相談に対して一緒に考え、どうやって活躍していかなければいけないか。そのためには何が必要なのかということを企業様とも相談して、じゃあこういう風にしていきましょうと提案をすることが出来ます。その点が、自分が将来なっていきたいキャリアプランにマッチしているなと。なので、いまはすごくやりがいを感じています。

 また、現在働いているリクルートスタッフィングは派遣会社でありながら、働く人々に元気を与えるスポーツ活動も応援しています。その一環としてスポンサー活動を行っており、スポーツを応援してくれる企業の風土があることにも魅力を感じています。

――室﨑さんは、営業成績新人トップの業績で2023年度新人賞を獲得なさったそうですね。そのために最も努力したこととは?

室﨑 振り返ると、入社して3ヶ月間ぐらいが肝だったと思います。その期間で、沢山の研修実施があったり、先輩に同行させていただいたりと一気に学ぶ機会を多く作っていただきました。とにかくたくさんの企業の担当者の方に会って、関係性を作りにいく中で、目標が与えられました。その目標を達成するためにめちゃくちゃ考えなければいけなかったですし、めちゃくちゃ行動しなければいけなかったです。そのがむしゃらな行動量が”当たり前”という基準になり、一年間続けられたということが大きかったのかなとは思っています。

――サッカーキャリアが仕事に生きているなと感じることはありますか?

室﨑 めちゃくちゃあります! 僕は、スポーツと仕事はすごくリンクするなというのはずっと感じていました。なので、サッカーでやってきたことが間違いなく仕事にも生きるという自信は、正直ありました。例えば、チームとして結果が出ていない時や、チームメイトが試合に出られなくてモチベーションが下がってしまっている時など、「いま、必要な声掛けや行動はなにか」とか、チームとして結果を出さなきゃいけない時には、「こうしていかなきゃいけないよね」という話をしたりする機会もあるので、組織として働いていく面ですごく通ずる部分があるのかなと、僕は勝手に思っています。サッカーもチームスポーツとはいいつつも、個性の集合体だと思っているので、その点で言うと会社も全く同じことが言えますよね。

――逆に、デュアルキャリアであることの不安などはありましたか?

室﨑 社会人としての知識が足りないのかなというところですかね。例えば、サッカーでやってきたことを、きちんとした社会人の言葉で伝えるとか、自分が考えていることや思っていることを言語化するみたいなところはすごく不安がありました。昔から働きながらサッカーをしていたとはいえ、時間調整をしていただいたり、お世話になった会社の人たちも“サッカー選手”という目で見てくれて、優しくしてくださっていた部分は多々あると思うので、“一社会人”として通用するかどうかの不安は強かったです。いま、29歳になりましたが、サッカー界でいうとこの年齢は「中堅」や「ベテラン」と言われていて、もう本当に、若手で何も知らずにガツガツやるのと同じメンタリティーでやっていてはいけないというのは常に思っています。でも逆に、社会人としては、若い頃から企業に就職して働いている同じ年代の人たちと比べると、自分は出遅れているという危機感もずっとあって、それは年を重ねるごとに感じていました。そこは唯一不安だったところかもしれないですね。

――アスリートにとって「デュアルキャリア」は非常に有意義な選択肢のひとつかと思います。すでにその道を選択なさっている室﨑さんが考える、成功するための秘訣とは?

室﨑 その競技と仕事、どちらにも「目的」を持つことが一番大事だと思います。例えば、サッカーにしか目標がなくて、「サッカーじゃお金がもらえないから、仕事はサッカーをするためにやってる」みたいな形だと、僕は「デュアルキャリア」は成立していないと思います。最も大切なのが、「サッカーでこうなっていきたい」という目的を作っていて、さらに「仕事でもこういう目的があって」ということ。で、この両方が繋がっていれば、一番理想的なのかなと思います。どちらかをおろそかにするっていうことではなく、それぞれからもらえる刺激があって、それぞれの目的のために自分がどうしていかなければいけないかを考え、行動することが、自分の何よりの結果・成長につながりますし、それこそが「デュアルキャリア」の最大の魅力だと思います。

――ネクストキャリアや今後について悩んでいるアスリートの方々に伝えたいことはありますか?

室﨑 もしかしたら、自分が今後どうなっていくだろう?という大きな不安を抱えている方もいるかもしれませんが、アスリートとして頑張っていることが、社会人になった時に必ず生きます。それに、自分が社会のことを知らないことを後ろ向きに思わないでほしいですね。それは、本当に1つのきっかけでガラッと変わるので大丈夫です。

 僕自身も、アスリートのセカンドキャリアという分野に関しては、のちのち関わっていきたいと思っていて、何か手助けできればなと考えています。

――室﨑さんだからこそできるサポートがたくさんありそうですね。

室﨑 そのためにはまだまだ経験と知識が足りないと思っています。僕も将来的にアスリートに対して良いサポートができるようにもっと頑張らなければいけませんね。ただ、やはりセカンドキャリアというのは、アスリートがスポーツをするにあたって、どうしても立ちはだかる壁になっていると思うので、不安をなくして壁を解消してあげることで、選手がよりスポーツに集中できて、熱量も注げるのではないかなとは思います。こうなるとスポーツ界はもっと盛り上がると思っています。

 アスリートをやっている上でたくさんの選択肢がある。スポーツでも仕事でも熱くなれることを体現して、自分がデュアルキャリアの可能性を広めていければなと考えています。

【室﨑雄斗プロフィール】
株式会社リクルートスタッフィング 北関東営業ユニット さいたま営業グループ 所属
東京ユナイテッドFC ミッドフィルダー
武南高校を経て日本体育大学卒業後、北信越1部のアルティスタ浅間、関東1部の東京ユナイテッドFC、そしてJFLの栃木シティと複数のクラブに所属。栃木シティではプロ契約選手としてもプレーした。その後、仕事と競技との両立を考え「良き社会人たれ、良きサッカー人たれ」をモットーに掲げる東京ユナイテッドFCに入団。同時期に株式会社リクルートスタッフィングに入社し、人材派遣業界で営業職として勤務している。入社初年度の2023年には新人賞を獲得。サッカー選手とビジネスマンという、デュアルキャリアとしての成功への道を歩んでいる。

【リクルートスタッフィングについて】
リクルートスタッフィングは、リクルートグループの中核会社として、人材派遣やビジネスプロセスアウトソーシングなどのサービスを提供し、事業を通じて『「らしさ」の数だけ、働き方がある社会』の実現を目指しています。
そのビジョン実現に向けて、「がんばれ!がんばる!応援団」を合言葉に、働く人々に元気を与えるスポーツ活動を支援しており、バスケットボールチーム「アルバルク東京」や、バレーボールチーム「ヴォレアス北海道」のスポンサーを務めるほか、大同生命SV.LEAGUEにおけるパートナー契約を締結しています。
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大阪生まれ東京育ち。 大東文化大学外国語学部中国語学科卒業。スポーツ紙のサッカーデータ入力アルバイト、スポーツ総合誌編集アシスタントを経てフリーライターへ。Jリーグ横浜F・マリノス、ジュビロ磐田の公式ライターとして活動したのち、2007年より東京ヴェルディに密着中。2011年からはプロ野球・埼玉西武ライオンズでも密着取材し、公式媒体や『週刊ベースボール』に寄稿中。

撮影/野口岳彦

1983年大阪生まれ、千葉育ち。 大学卒業後、テーマパークのスナップカメラマン、都内の写真事務所勤務を経て、2011年からフリーランス。 2014年よりJリーグオフィシャル撮影も担当。使用機材はNikon。

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