サッカー・室﨑雄斗さん|Jリーガーを諦めても 仕事との両立で二つの夢を叶える方法

2024.12.25
取材/ 上岡真里江
撮影/ 野口岳彦

 「デュアルキャリア」という概念をご存知だろうか。アスリートにとっての「デュアルキャリア」とは、人生、いわば社会人としての軸を「キャリア」とするなかで、そこにもうひとつ、アスリートとしての「キャリア」を軸に加え、両立させていくスタイルをいう。

 室﨑雄斗さんもそのひとり。現在、関東サッカーリーグの東京ユナイテッドFCでプレーしながら、株式会社リクルートスタッフィングの社員として働いている。2023年度は新人賞に輝くなど、営業成績は好調だ。大好きなサッカーを現役選手として続けながらも、引退後のビジネスでの成功を視野に入れ、着々とキャリアを積んでいる室﨑さんに、両立の秘訣をうかがった。

 インタビュー前編では、地域リーグでプレーする選手が「Jリーガー」への想いを断念し、現在のキャリアに至るまでについて語ってもらっている。

――現在、現役サッカー選手としての活動と就業、時間的にどのようなバランスなのですか?

室﨑 仕事は月曜日から金曜日まで毎日。サッカーに関しては、平日は火、水、木曜日と、あとは土曜日、日曜日の活動ですね。出勤日の練習時間としては、基本的に火曜日が午前6時半から8時半までで、水、木曜日が午後6時半から8時半までとなっています。

――ハードスケジュールですね(笑)

室﨑 この話をすると、いろいろな方に「きついね」とか「すごいね」と言われるのですが、自分が選んでやっていることなので、僕の中ではまったく苦ではなくて。むしろ、サッカーが仕事の刺激になったり、仕事がサッカーの刺激になったりと相乗効果もあると感じています。

――実際、周囲にはデュアルキャリアの形をとっている方も多いのですか?

室﨑 かなり多いですね。現在、僕が所属している東京ユナイテッドFCというチームでは、「デュアルキャリア」として仕事とサッカーを両立している選手がたくさんいて、日々良い刺激を受けています。またリクルートスタッフィングにもデュアルキャリアで働いている方々が多いので会社内でも刺激を受けています。年齢があがるにつれ、しっかりと働きながらアスリートも続ける、という形をとる選手が多い印象ですね。

――仕事ありきだと、仕事の進捗具合によっては終業がサッカーの練習時間にずれ込んでしまうこともあるのでは?

室﨑 やむを得ずずれ込むことはありますが、リクルートスタッフィングではフレックスタイム制を導入しているので、自分でスケジュールを調整しやすいのが助かっています。できるだけ練習時間に間に合うように意識しています。

 20代前半までは、ひたすらサッカーを第一優先でやっていましたが、今はサッカーと仕事の両方に目標ができて、どっちも大切にしていきたいと思っています。そのためには、日々のスケジュール管理や自身で立てた目標を一つずつクリアしていくことが重要だと思っています。これは、今までサッカーをする上で結果や目的から逆算しながら考え行動してきたこととリンクするので、仕事にも応用できていると感じます。

――プロ選手一本で稼いでいく目標を諦めて、仕事をしながらサッカーを続けていくという選択肢を、本気で決意したのはどのタイミングだったのですか?

室﨑 大学卒業して5年目ぐらいだったと思います。栃木シティでプロとしてやらせていただいたのですが、その頃に「Jリーグは目指さない」という決断をしました。

 一番のきっかけは、子供が生まれたことでした。その頃から「自分一人のために、サッカーだけの目標を追う」という考えはなくなっていました。プロとしての収入は自分自身の実力に依存するので、家族ができたことで将来の安定を考えるようになりました。自分のサッカーでの立ち位置を冷静にみつめ、今後の自分がやっていきたいことや目標を見直した結果、軸をサッカーから社会人としてのキャリアに移すことを決意しました。栃木シティには自ら契約解除の相談をし、就職活動を始めました。

――栃木シティに自ら契約解除を申し出たのちに、過去にも所属した東京ユナイテッドを選んだ理由とは?

室﨑 “Jリーグプレーヤー”という立場を諦めたとはいえ、自分にとってサッカーが大切であることに変わりはないので、サッカー自体はどうにか続けていきたいと考えていて、東京ユナイテッドFCの代表へ相談し入団を決めました。以前所属していた際から東京ユナイテッドFCは「サッカーして仕事をする、仕事してサッカーする」というコンセプトであること理解していましたし、実際、チームの代表も、「働きながらサッカーをしよう。社会人として働き、いろいろ学ぶことによって、サッカー面でも人間的にも成長できることは多い」と、一貫しておっしゃっています。Jリーガーとして活躍するという夢を諦めて、東京ユナイテッドFCに戻ってきて仕事と両立するなかでも、「サッカーがもっと上手くなりたい」「大会でより良い結果を残したい」という目標は変わらず追えています。

――就職活動の末、株式会社リクルートスタッフィングへと就職。選んだきっかけは?

室﨑 栃木シティとの契約解除が決まった時に、大学のサッカー関係のつながりの方がたまたま声をかけてくださって、就職先におすすめという色々な会社を紹介してくれ、その選択肢の1つがリクルートスタッフィングでした。

――もともと、人材派遣などの業務に興味があったのですか

室﨑 いいえ。正直、サッカーを辞めたあと何の仕事をしたらいいのかわからなくて。まず自分にどのような選択肢があるのかもわからないですし、就職活動をするとしても、どこに応募したらいいのか、どの職業紹介や転職・求人サイトを利用すればいいのかわからない。仮にエージェントから話をいただいても、面接で何を話したらいいのかわからないという状況だったんですよね。そのなかで、自分のなかに唯一あったのは、「将来的にはこうなりたい」というキャリアプランだけでした。そのプランを紹介してくれた方に話したら、「じゃあ、人材業界の仕事だったら、そのキャリアプランに繋げていけそう」ということで、まず人材という業種に絞ったという形です。あと、もうひとつは、正直な話、収入面も大きかったです。未経験でも、自分が頑張った分だけ成果に反映される仕事を求めていたので、この2つの軸を基に今の会社を選びました。

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【室﨑雄斗プロフィール】
株式会社リクルートスタッフィング 北関東営業ユニット さいたま営業グループ 所属
東京ユナイテッドFC ミッドフィルダー
武南高校を経て日本体育大学卒業後、北信越1部のアルティスタ浅間、関東1部の東京ユナイテッドFC、そしてJFLの栃木シティと複数のクラブに所属。栃木シティではプロ契約選手としてもプレーした。その後、仕事と競技との両立を考え「良き社会人たれ、良きサッカー人たれ」をモットーに掲げる東京ユナイテッドFCに入団。同時期に株式会社リクルートスタッフィングに入社し、人材派遣業界で営業職として勤務している。入社初年度の2023年には新人賞を獲得。サッカー選手とビジネスマンという、デュアルキャリアとしての成功への道を歩んでいる。

【リクルートスタッフィングについて】
リクルートスタッフィングは、リクルートグループの中核会社として、人材派遣やビジネスプロセスアウトソーシングなどのサービスを提供し、事業を通じて『「らしさ」の数だけ、働き方がある社会』の実現を目指しています。
そのビジョン実現に向けて、「がんばれ!がんばる!応援団」を合言葉に、働く人々に元気を与えるスポーツ活動を支援しており、バスケットボールチーム「アルバルク東京」や、バレーボールチーム「ヴォレアス北海道」のスポンサーを務めるほか、大同生命SV.LEAGUEにおけるパートナー契約を締結しています。
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大阪生まれ東京育ち。 大東文化大学外国語学部中国語学科卒業。スポーツ紙のサッカーデータ入力アルバイト、スポーツ総合誌編集アシスタントを経てフリーライターへ。Jリーグ横浜F・マリノス、ジュビロ磐田の公式ライターとして活動したのち、2007年より東京ヴェルディに密着中。2011年からはプロ野球・埼玉西武ライオンズでも密着取材し、公式媒体や『週刊ベースボール』に寄稿中。

撮影/野口岳彦

1983年大阪生まれ、千葉育ち。 大学卒業後、テーマパークのスナップカメラマン、都内の写真事務所勤務を経て、2011年からフリーランス。 2014年よりJリーグオフィシャル撮影も担当。使用機材はNikon。

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